Gentle Annie
彼の作品には珍しく、恋人アニーと死別した嘆きを歌った暗い内容の曲ですが、美しいメロディによって昇華され、どこか気品すら漂う佳曲に仕上がっています。フォスター30歳の頃の作品です。次からは、福永陽一郎氏編曲のフォスターの曲によるメドレー「From The
Sunny South」から7曲を歌います
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1.序曲
数曲のメロディーの断片のあとに、あの「風と共に去りぬ」の「タラのテーマ」が続き、南部ムードをいやが上にも盛り上げます。
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2.懐かしきケンタッキーの我が家(フォスター27歳の作)
農場に働く奴隷たちは凶作という悲劇に襲われ、家族は離れ離れになりますが、はるか遠い故郷を思い、心の安らぎを得るのです。
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3.夢見る佳人(晩年37歳の作)
「美しき夢見る佳人よ、我が為に目覚めよ、月の光に優しく照らされたその姿は、荒くれた俗世間の喧騒を忘れさせてくれる。」と歌う恋の歌。
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4.金髪のジニー(28歳の作)
「軽やかに舞う。まるで雛菊のように可憐なジニーの夢を見る。明るい茶色の髪をなびかせ、まるで夏の日の霞のようにふんわりと。」
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5.故郷の人々(25歳の作)
奴隷たちが移り住んだ北部での生活は、貧しく辛いものでした。そんな時は、大農場で幸せに働いていた頃や、遠い故郷に思いを馳せることだけが心の拠り所でした。
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6.オースザンナ(22歳の作)
友人たちと陽気に騒ぐためのナンセンスな歌詞を持つ調子の良い曲。「俺はバンジョーを抱えアラバマからやって来た。ほんとの恋人を探すためルイジアナに行くところさ」
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7.オールド・ブラック・ジョー(30歳の作)
小説「アンクルトムズ・ケヴィン」の影響を受け、作曲されたと言われています。天の声に呼ばれ、天国へ召されていくジョー。彼にとってそれが辛い現実を逃れる、幸せな瞬間でした
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「翼」
1982年2月、恩地日出夫演出の演劇「ウイングス」公演のために作曲され、劇中、市原悦子によって歌われました。「こうしたポップス系の歌を書くことは、自由への査証を得るためで、精神を固く閉ざされたものにせず、いつも柔軟に開かれたものにしておきたいという願いに他ならない」と武満氏は後述しています。テンポの揺らぎ、細やかな強弱の変化によって、詩の主張と音楽とが見事にシンクロし、夢、自由、憧れ、というテーマを情緒豊かに描き出し、最後は、主和音の透明な響きで終わります。
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「さようなら」
新日本放送の朝のラジオ番組「私の歌」のために作曲され、1955年8月に放送。男と女の別れの情景、悲しいけれど、希望を残したどこか複雑な心の襞が歌われます。この曲の魅力は、その繊細なメロディーの自然な繋がりです、声部から声部へと繋がりながら次第に高潮してゆき、終り近く、いきなりスウィングのリズムに変わります。「さようなら、あなたの中に、私は部屋を、限りなく探し続けている」一番伝えたかったことがこの部分に凝縮されています。どこかフランス歌曲のような洒落た味わいのある曲です。
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「島へ」
1983年TVドラマの挿入歌として作曲され、翌12月東京混声合唱団演奏会で合唱曲として初演されました。人は誰も、いつか何処かで、いちばん大切な人に巡り合うもの、その機会は、例えば、ガラスの回転扉を廻った後、突然訪れるのかもしれません。「見知らぬ人よ、あなたは何処にいるのですか?」そういう歌いだしから始まり、出会いへの期待と憧れを12/8拍子の流れるようなリズムで歌っています。和音自体は単純化されてはいるものの、どこか斬新さを感じさせます。
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「死んだ男の残したものは」
1965年4月、東京で開催された「ベトナムの平和を願う市民の集会」のために作曲されました。今回の男声版編曲は林光氏の混声合唱編曲版に準拠しています。人の重い足取りを思わせるようなピアノ伴奏部(林光)は、単なる歌のサポートにとどまらず、独自の主張を持って、歌と絶妙に調和し、前半では戦争の虚しさを、そして後半は平和への切なる願いを描きだしています。「死んだ歴史の残したものは、輝く今日と、また来る明日。他には何も残っていない」
心の叫びをお聴きください。
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「小さな空」
1962年、TBSラジオの子供のための連続ラジオドラマ「ガン・キング」の主題歌として作曲されました。空を見上げると、なぜか感傷的な気持に襲われるもの、「いたずらが過ぎて、叱られて泣いた。子供の頃を思い出した」この歌詞に思い当たる方も多いことでしょう。井上陽水の奥さん、石川セリが、自らのアルバムの中でこの曲を歌っていますが、さりげなく、それでいて味のある歌いかたが素敵で、それをイメージして今回は武藤茂の編曲によって、伴奏付きのポップス調に仕上げられています。
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