合唱団ダンディーズ広報誌
あんさんぶる No.12
2007年8月発行

若々しくやさしい歌声に感心

山吉一成/川崎市の多摩地域で複数の合唱団の指揮者 

 会場の東久留米市立中央公民館には開場前から長い行列。開場1時30分よりも早く開場して、開演時には500余の席は満席。立ち見(聴き)も出る盛況。圧倒的に多いのはおばさま族。その中にパラパラとおじさま族。

 2時開演。
第1ステージ
「ダンディーズ愛唱曲から5曲」
 なつかしい「翼を下さい」を始めとして、親しみやすいポピュラー系の曲。男声合唱らしい重い声を予想していたのが、うんとやさしいハーモニー。  練習は大変だったろうな。

第2ステージ 
我らが先輩・多田武彦の「男声合唱組曲から」
 このステージも押さえに押さえたやさしいハーモニーでした。ついガナリたくなる(と思いますね)団員を抑えて、実にきれいにまとめた指揮者のご苦労が良く分かる、そしてガナリたくなるのを押さえて、一生懸命ハモッテいる団員の努力、ご立派でした。

休憩時間の前に、「皆で歌いましょう」
 懐かしい歌の楽譜が、プログラムに挟まれていました。「カチューシャ」と「泉のほとり」。覚えている方もいるのではないですか。われわれの学生時代に流行ったロシア民謡で、団員も座席の中に入ってきて一緒に歌っていました。懐かしく大声で歌いました。

第3ステージは指揮者お好みの「アメリカ音楽名曲集」 黒人霊歌から、ミュージカルまで、200年の歴史でもいろいろな流れがあります。
 小グループのスイングもあり、楽しいステージでした。

 そして、お待ちかねのアンコール。1曲目はきれいなアカペラ「梢」。歌いなれている曲のようです。2曲目「琵琶湖周航の歌」は、演奏に先立って、指揮者がこの曲について一世を風靡した「加藤登紀子調」とオリジナルの「旧制三高歌集」の楽譜があるので、2番を三高歌集の楽譜で歌いますと紹介してくれました。私は一応楽譜を持っていったので、違いが分かりました。

 大変楽しい良いコンサートでした。平均年齢67歳とのこと。学生時代に歌っていたという人が半数を占める男声合唱団を こんなにやさしい、きれいな歌声にまとめる指揮者は大した方だと感心しました。 又指揮者の指示に従って、ついガナリたくなるのをじっと抑えて歌っている団員の方々もご立派です。次回のコンサートも是非若々しい歌声を聴かせて下さい。

ご要望に沿って、敢えて辛口のコメントを・・・

山下公輔/いらか会合唱団正会員、三月会休会員
& ダンディーズ休(旧?)団員

 諸事慌しく過ごしているうちに、すっかりダンディーズから足が遠のいていましたが、第5回演奏会とあれば、どうしても聴かせていただかなくてはと、久しぶりに東久留米まで駆けつけました。
期待に勝る楽しい演奏会で、自分もステージに乗れたらよかったなと思いながら、最後まで楽しませていただきました。そんな演奏会に対して、辛口のコメントをという編集長殿の難しいご注文に困惑しましたが、たってのご要望ということで重い筆を取らせていただきました。
 初めに、どんな辛口であっても褒めないわけにはいかない点を申し上げておきます。それはステージの構成と、歌っている皆さんによって醸し出される全体の雰囲気です。以下の辛口コメントを差し引いても、本当に「皆が楽しめる」ステージ構成・演出であり歌い振りでした。このような演奏会を持てる合唱団は、他には無いといってもよいのではないかと感じています。

 さてその上で敢えて申し上げる辛口コメントの第一は、多田武彦のステージです。歌われたメンバーご自身が気付いておられると思いますので、多くは申し上げませんが、そもそも難しい曲ばかり選んだなという感もありますが、それを差し引いても、もう少し良いハーモニーが聴きたかったというのが実感です。アカペラをきちんと歌うことの難しさを痛感させられ、はらはらさせられ通しのステージでした。
 辛口コメントの二つ目は、声の響きと声量です。最初の一曲で、本来fやffまで行き着くはずのクレッシェンドがmf程度に終わり、アレッと感じながらも、歌いはじめは固くなりがちだしと思っていましたが、結局どのステージでも本当のfやffがほとんど聴こえてきませんでした。fやffが聴こえてこないということは、pやppも聴こえない(感じられない)こととなり、おしなべていわゆるディナミクのはっきりしない演奏になってしまったと感じました。
 原因の一つにホールの音響性能があったのは間違いありませんが、やはり根本は発声の問題だと思います。男声合唱というと、ともすると土間声・銅鑼声になりがちなことに気を配って、柔らかい発声を目指しますが、柔らかい発声と弱い発声は別です。以前一緒に歌わせていただいていた時も、一部の方を除いて必ずしも声量が十分ではないと感じてはいましたが、今回久しぶりに客席で聴かせていただいて、全体的に「声が前に出ていない」という感が否めませんでした。

 歌い慣れない曲や、曲の中で難しくて自信の無い部分にくると、自分の声が目立たないように、スッと声を引いてしまうことは良くあります。歌いこみが不足している場合など、怪しい部分で声を引いて「上手にごまかす」ということも技術の内と云えないことも無いのかもしれません。しかし、今回の皆さんの「曲に乗った」歌い振りは、どう見ても「上手にごまかして」歌っているようには見えませんでした。そもそも、各パート共「バランス良く?」声量が不足しており、結局は皆さんが声を十分に出しきっていないと思わざるを得ません。(全体的に音量不足という意味で、各パート共といいましたが、元バリトン2人を入れて4人というトップには、ちょっと酷なコメントかもしれません。むしろ明らかに不利なトップに比べ、支えるべきバス、バリトンが弱いというべきかもしれませんが・・・)

 最近の、発声練習の状況はよく存じませんが、たまには大声を出す発声練習もよいのではないでしょうか。土間声・銅鑼声のコントロールは、声量が出てからでも出来ます。大容量のアンプの出力を絞って繊細な音を出すと同じように、繊細なpやppは、出そうと思えば出る声量があってこそ際立ちます。
 声量のことで思い出すのは、皆さんもご存知の三月会(早大コールフリュ−ゲル、シニアOB合唱団)のことです。私も一応メンバーで時折歌いに行っていましたが、しばらく前まで私は三月会を、「Sempre Forte 合唱団」と勝手に呼んでいました。ともかくデカイ声で歌う人が多く、そうなるべきところで一向にpやppにならないのにいらいらしていました。ダンディーズの方も何人か聴きにこられていたようでしたが、去る5月にその三月会の第3回演奏会がありました。私は参加できず客席で聴きましたが、演奏会終了後の打ち上げでの私のコメントは「三月会も上手くなったなー」でした。上手くなった理由は単純で、元々fやffは幾らでも出る三月会が、pやppを出すようになったからです。

 三月会は、しばらく合唱から遠ざかっていた人が中心とはいえ、昔取った杵柄の集まりであることは確かですが、平均年齢はダンディーズとほとんど同じかむしろ高くらいです。一方、客席から見えたダンディーズの方々のほとんどは、私も顔見知りの方々でした。ということは、大半の方は少なくとも既に数年は合唱をやっておられるということだと思います。勿論、人数の違いはありますが、20人余りというダンディーズの規模は、男声合唱団として大人数とはいえないものの、決して非常に少ないとはいえません。今のダンディーズなら、ホールの音響性能が多少悪くても、それに影響されない声量や響きは必ず出せるはずです。
他では得がたいダンディーズらしさを十分に発揮しつつ、より豊かな「声量と響き」の聴ける、第6回演奏会に期待します。